フィンケ監督について~Number 722号

2009年5月10日日曜日 12:03

一体何年ぶりだろう,Redsの試合がある日をこんなにもワクワク楽しみに待つなんて。

川崎との試合まで,あと2時間弱。

少なくともここ2年ぐらいは,何だか試合がおもしろくなかった。
ACLで優勝した年でさえ。
チームのまとまりが感じられず,チームが目指してるものが見えてこなかった。
何だか選手の表情も硬く感じられた。

それがどうしたこと!?
たった何ヶ月かで,こんなにも雰囲気が変わっちゃって!
フィンケ監督,あなたって… ただ,ただamazingです。

シーズンが始まる前の,フィンケ監督の独占インタビュー記事を見つけた。
10試合が終わったところで読むと,また興味深い。
Number 722号からの抜粋らしい。
全文を読めないのが残念。

木崎伸也=文
【独占インタビュー】
フォルカー・フィンケ Volker Finke
"ドイツのオシム"は浦和をどう変えるのか。    

 1月上旬、フライブルクのアパートの一室で、私たちはフォルカー・フィンケに会った。昨季無冠に終わった浦和レッズが、再建を託した人物である。

 事務所に入ると、フィンケは慌しく資料を整理していた。数日後に迫った日本行きの準備に追われているのだ。ドイツサッカー協会のロゴが入ったファイルや、某クラブの育成レポートなど、重要書類を丁寧にソファーの上に並べている。もしこの全てに目を通せば、すぐに近代サッカーの専門家になれるだろう。

 フィンケは知る人ぞ知る、ドイツの理論派監督のひとりである。42歳のときに高校教師を辞めてプロ監督になり、地方の小クラブだったフライブルクをわずか2年で1部に昇格させた。その余韻覚めやらぬ'94-'95シーズンには、無名選手ばかりのチームをまとめあげ、1部の3位になるという快挙をやってのけた。16年に渡ってフライブルクを率い、もちろんこれはブンデスリーガの最長記録だ。

 資料整理の手を止めて、フィンケがコーヒーマシーンのスイッチを入れた。どうやらインタビューの準備ができたらしい。

 「これは私が浦和の監督になってから受けた、初めてのインタビューだ。さあ、記念すべきインタビューを始めようじゃないか」

 フィンケはイスにどかっと腰を下ろすと、60歳とは思えないほどにエネルギッシュな声を腹の底から出した。


──まずフライブルク時代について、聞かせてください。あなたは地方クラブのフライブルクを一人前に育て上げ、UEFAカップに2度出場し、1部昇格も3度果たしました。どうやって改革した?

 「私がフライブルクに来たときは何もなかったが、長い時間をかけて、スタジアムを改築し、ピッチを増やし、チームの基盤を築いた。我慢強く育て、無名の選手に成功をもたらせたと思っている。1部でいい成績を残すたびに、選手を引き抜かれたが、私はその状況を受け入れた。なぜなら移籍すれば選手の給料は2倍になり、一方でクラブは移籍金を手にして施設に投資できる。そんなウィン・ウィンの関係を作ることができたんだからね」

──フライブルクから巣立った選手を見ると、おもしろい共通点があります。'06年W杯に出場したドイツ代表のケール(ドルトムント)、グルジア代表のコビアシビリ(シャルケ)やドイツU-21代表のアオゴ(ハンブルガーSV)など、複数のポジションをこなせる、ポリバレントなタイプが多い。なぜでしょう。

 「答えは簡単だ。もし、選手のポジションが固定されている2チームが対戦したとしたら、勝つのはどちらか。それは優れた選手が、多くいるチームだ。だから、もしスター軍団のチームに勝とうと思ったら、何か特別なことをしなければいけない。ひとつのポジションに固定されず、よりフレキシブルにプレーしなければいけない」

──ドイツでは、あなたはコンビネーション・フットボールの信奉者として知られています。戦術を説明してくれませんか?

 「私はフライブルクでの16年間で、およそ5つのチームを作り上げた。結果を出すたびに選手を引き抜かれ、一からやり直さなければいけなかったからだ。ただし、常にコンビネーション・フットボールを目指したことに変わりはない。ポゼッションを好み、ショートパスで相手を崩す。これをできるかは走る量にかかっている。守備時にどれだけ走ってプレスをかけられるか。攻撃時にボール付近で数的優位をどれだけ作れるか、にね」

──そういう攻撃サッカーは、どんな練習をすれば実現できるのか。どの監督でも、相手がボールを持っているときのトレーニングの方法論は持っていると思うんです。それに対して自分たちがボールを持っているときの練習は難しい……。

 「そのとおりだ。多くの監督が練習の80%を、相手ボールのときの練習にあてている。だが、私は違う。マイボールのときの練習パターンが無数にある。キーワードはハンディだ。的確なハンディを持たせたゲームを行う。それをメディアに語ることはできないけれどね。試合で自分たちがボールを持っているとき、たくさんのパターンが出現する。もしそのパターンに対して、コンビネーションを練習しておけば、実戦で大きな武器になる。私自身たくさんのパターンを試して来たし、変更して来た。パターンの認識と反復練習がコンビネーション・フットボールを助けるんだ」


 ここでフィンケが、ユーロ2008でスペインが優勝したときの新聞記事を取り出した。大会中、フィンケはスイス国営放送の依頼で、解説者として現地にいた。攻撃的なスペインが優勝したことを、自分のことのように喜んだという。

 「今、サッカー界では相手にプレスをかけてボールを奪い、少ない手数で素早く攻めるやり方が流行している。ドイツ代表もそうだ。しかし、それはもはやモダンではない。スペインのように、焦らずにボールをまわし、相手の隙を見つけた瞬間、一気にスピードアップしてゴールを目指すやり方がモダンだ」


──次に「語る力」について聞かせてください。サッカーではあらゆる場面で選手とのコミュニケーション力が重要になると思います。

 「コミュニケーションは私にとって、最も興味深く、最も難しい課題だ。たとえば今回、私が短期間に日本語を学ぶのは難しい。ちょっとした日常会話は覚えられるかもしれないが、監督の仕事には誤解があってはいけないからね。だから浦和では、練習を英語で行う。さらにドイツ語や日本語に堪能なコーチがいるので問題はない」

──コミュニケーションと言っても、直接的な言葉以外の要素もあります。言葉以外に重要なものは?

 「監督が自分なりのアイデアを持っていることだ。アイデアがともなったフットボールは、それそのものが“言葉”なんだよ。日本人でも、中国人でも、アメリカ人でも、みんないっしょにプレーすれば、それがコミュニケーションだ。なぜ、世界中の人がサッカーを愛し、熱狂するのか。それはフットボールそのものが、第一の言葉だからだ。オレはここにいるぞ、というエモーションであり、怒りである。フットボールにおいては、多くのコミュニケーションが感情的になされる。フットボールのアイデアこそ、興味深いものだよ」

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